アイルランドの歴史の話3
もともと、文学や歴史そして演劇などに縁のなかった私が、哲学や倫理社会など少しかじったくらいで、一つの国の歴史にかかわる専門書に挑戦することは、無理があり無謀な行為でした。
ただ、時間は充分にあったので、とりあえず読み始めました。
ボケの防止にもよいのではないかと思いました。
約2週間を費やしての620ページの「表象のアイルランド」 本編600ページ+訳者解説20ページ
表象の意味は本の中では「代表する」という解釈、その他 記憶、想像、象徴という意味もあります。
とりあえず、難解な専門書を一応読み終わったという、達成感のみが残りました。
体力消耗も目の疲れもありました。
集中力も必要でした。
でも、だんだん本の中身に引き込まれてゆきました。
ケルトという言葉の響き、一つの民族の文化、古代人の生活が頭に浮かびます。
現代のアイルランドはコンピュータのCPU(ペンティアムなど)の生産工場が外国資本で作られたり、様々な企業が進出している状況が、後書き解説にありました。
時代は進み、またたく間に国の状況は変わりました。
さて、アイルランドの歴史です。
口述伝承(言葉での伝達、昔からの伝説などを言葉で代々受けついで伝えていくこと )
宗教はカトリック信仰であった。
ただ、他国に比較して地域性が尊重されたアイルランド独自の形があったようです。
アイルランドの修道院の伝統が文字を伝える伝統によって文明を救ったということ。
しかし、文明を守る前に、ふさわしい知性の訓練があったこと。
文字を持たないにしても、記憶を鍛えることで、高度な知性の分野の開拓に余念のなかったこと。
古い時代の修道院は、今でいえば一つの多角経営の会社の工場みたいなもので、農作物、酪農、加工食品製造
(チーズ、バター、ソーセージ、ハムetc )、衣類縫製など身の回りの必要なものを、自分達の労働力、知識、技術でまかなっていたということになります。
また、それを売って収入、修道院、教会の財産にしていく。
また、そのノウハウを他民族に伝承していた。
いつの時代から口述伝承が文字文化になっていったのか定かではありませんが、民族の歴史に知性という事が、深くかかわっていたのだと考えます。
イギリスの植民地になった時代には、宗教上の問題、外から入ってくるのはプロテスタント信仰(キリスト教)で、アイルランドに古くからあるカトリック信仰との反目(対立)がありました。
カトリックは権威主義を意味し、ローマ・カトリック教会の支配のもとに従う。
プロテスタントは自由を意味する。
両者は別々のもの。
アイルランド国民は二重の圧制のもとで虐げられてきた。
そういう生活を強いられてきたということになります。
宗教上の問題はかなりむずかしいので、これ以上深くは入りません。
土地所有の権利などもイギリスの介入により、支配階級から小作人階級に移し替えるなど革命的な歴史もありました。
1845年の大飢饉、じゃがいもの胴枯れ病、チフスなどの伝染病も発生しました。
不安を感じた国民は続々と国外へ流出してしまう。
宗教的対立、言語の問題(アイルランドはゲール語やケルト独自の言語)、それにイングリッシュが外部からの言語として入り、半ば強制的に切り替えさせられる。
これはとても大きな問題で国の文化そのものにかかわってくる。
古い言語が消滅する危険がある。
アイルランドはイギリスの植民地という立場で、必要物資の確保や国民の意識の統一などの点で、不安定な時代はまだまだ続いていきました。
こんなにむずかしい状況に立たされたアイルランドの国民は、古くからの伝統である口述伝承の文化が最終的に演劇(神話、詩、小説も同等)を創作し、国民の精神をその中に盛り込んで、演じる側と見る側、詩であれば語り手と聞き手のあいだの伝達により、国民が感じている、魂の叫びともいえる苦しみ、願望、祈りを共有していたのだろうと考えます。
演劇文化が国の政治に反映されるというアイルランド特有の歴史的事実といえます。
ここで、少し整理します。
文字を持たない文化
口述伝承
↓
神話
↓
演劇、詩、小説、哲学、音楽
アイルランド修道院の伝統が
文字を伝える伝統によって
文明を救った。
↓
高度な知性の分野の開拓。
近代文明と伝統古代文明の
融合により、両者のよい所を
とり込んでの、新しい文化を
作り上げる。
テーマがアイルランドの歴史という、とてつもなく大きく重いものなので、とても私の軽口のブログでは表現しきれるものではありません。
そして著者が海外の有名大学の教授ですから凡人以下の私などには手に負えないものです。
なんとか読破しましたが、どこまで頭に入ったかは疑問です。
音楽、詩、演劇、神話というのは、少しは身近に感じられるので、むずかしい歴史や政治を身近な文化の面からながめる事で、少しでも理解ができればいいのだと考えています。
では、この辺で。
次回はもっとやわらかくいきたいと思ってます。
ジェフベック、ケルティック・ウーマンなどアイルランドに関係した音楽の話題にしたいと考えています。