ベーシストのオーディション4
3 の続きです。
何度かのスタジオ練習をこなしました。これは高等学校時代のテスト直前の
試験勉強、それも一夜漬けのやつ、これによく似たものだったと思います。
さすがに出席率が低いキーボードの彼女も目は譜面釘付けで必死にがんばってます。ときおりリードギターTくんの厳しい声も聞こえていたような気がします。
なにせ今から38年前のことですから、正確に思い出すことは、不可能です。少しだけ演出が加わるかもしれませんがお許し願いたいと思います。
サイドギターのMくんは、さすがにスポーツマンらしく経験が浅いながらも、不明点はリーダーに質問したり淡々と自分の仕事をこなしていきます。
私はMくんとは、たまにしか顔を合わさないので、どんな性格なのか掴めてませんでしたが、落ち着いて黙々とものごとに取り組むタイプに見えました。
バンド活動にも人の性格、人柄というものは表れるものですね。彼はアンプやキーボードなど機材の運搬の時、積み下ろし作業など積極的に働いてくれました。
さすが伊達にラグビーをやってる訳ではなかったのです。
1977 12 27 ソニービル(銀座)ダンスパーティー 我々の初ライブはいよいよ
スタートします。、ドキドキ や ハラハラ の連続となりました。
実は我々のバンドの他に、プロのフュージョン系のバンドも共演することになっていました。
本番前にエレベーターホールですれ違いましたが、思ったよりも若いグループで
和気あいあいとして、リラックスしてました。
相手のバンドはブラスセクションありでサックスがリードをとる本格的なもの。
リードギターはギブソン・レスポール、ベースギターはフェンダー・プレシジョンベース。
私もベースなのでついつい、そちらのほうに目がいってしまいます。
芯のある太いサウンドをひねり出してました。
チョッパーなんかも軽くこなして、流石にプロは違います。
ちなみに私のベースは国産グヤトーン製でミドルサイズ・ネックのリーダーからの借り物。アンプはヤマハの100ワットトランジスタ回路。アンプはレンタルです。
あまり芯のある音はでません。なんか締まりのないボヨーンとした安っぽい音。
仕方ありません。アマチュアなんだし。
フュージョン系のバンドのリードギターは、ヴィブラートがとてもうまく、うねりのあるギターのフレーズが展開され、なめらかで細かいフレーズ展開も印象的で小気味よく耳に残ります。
もちろんチューニングは完璧。当たり前でしょうね。多分エフェクターはコンプレッサーあたりかな。
サックスのプレーヤーは外国人
で、我々の後の第2部だったので少し酔っ払っての演奏でしたが、結構乗りまくって、楽しそうにサックス吹いてました。
パーカッションもあり音の厚みでは到底我々には、とてもとてもかなわないレベルの音楽でした。
彼らは本番前のスタンバイ、バンド自体のチューニングの時間など恐ろしく手際が良くて、大変勉強になりました。
ステージに向かって右側が我々のバンド、左側がフュージョン系のバンドです。
いよいよ我々のバンドの登場、初ライブがはじまります。
オープニングはベンチャーズのアパッチから入りました。
私はソニーのラジカセを用意して今回ライブの録音をしてました。
そのカセットをヘッドホンで聞きながら、記事を書いてまいります。
スターティングナンバーは、いま考えるともっとアップテンポの曲が良かったと思います。
2曲目は クルーエルシー、少しは軽快に演奏出来たと思います。
曲の途中、サビ2回目の後にドラムの音が突然消えてしまう。スティックを落下させたらしい。
しかし気を取り直して演奏を続けた。
2曲目なのでバンドメンバーにちよっとは落ち着きが出てきたみたいです。
とにかく、1部はなんとか終了。
第2部はフュージョン系のバンドが演奏。
1曲目はリードギターが上手いアドリブを聞かせます。
彼らは自分のパートになるとそのたびに立ち上がって演奏するのです。
ギターはリズムギターもいてシャキシャキと切れ味良いサウンドを聞かせてくれました。カッティングも小気味よく決めてくれます。
曲中、繰り返しのフレーズがあり、サックスとリードギターのユニゾンというのかハモリがとても綺麗に響いた。
2曲目はアップテンポの曲でドラムとベースのグルーブ感がすごくよくて、際立ってました。
パーカッションのタンバリンの乾いたシャカシャカ音も小気味よく鳴ってました。やはり、我々のバンドとは全然ジャンルが違うのです。
べースフレーズではコードチェンジでの半音階の上昇するベースランニングもよし。
いよいよレスポールのリードギターもまた登場し、甘いサウンドを聞かせてくれました。。
こんどはアルトサックスがリードをとる。少し、もの悲しいメロディーラインだが大人のムードで、リズムのノリも良くフュージョン系のダンスミュージックみたいなもんでしょうか。
いよいよ次は我々のバンドの出番、ラストの第3部のステージが始まります。
キーボードの女の子はかなり緊張しているようです。
楽器を持ちスタンバイしてると、ダンスパーティーに来ている男性にもお酒が入り遠くから「ロックンロール大きいのやってくれよ。!!」と掛け声が聞こえてきます。
私はメンバーに音量を少し低めに下げるよう指示を出した。特にリードギターに。
彼に向かって「低めにね!」と言葉を掛けたが、録音を聞いてみると私の意志は伝わらなかったようです。
なにせ彼のアンプは200Wの2段積みのハイパワーの凄いやつ。我々はツェッペリンのようなハードロックとは違うのだから。
1曲目 ダイヤモンドヘッド から入りました。イントロのリードギターが図太い低音のトレモロフレーズをかき鳴らす。
TくんのエレキギターはBCリッチの高級なギブソン系のパワーのある、プリアンプ内装のモデル。かなりの価格です。
ちよっと、羨ましいですが。
ベンチャーズのサウンドにはあまり向いてないと思いました。
やはりサンタナのディストーションサウンドにヴィブラートかけてやる楽曲にふさわしい。
ベンチャーズはやはり、フェンダーかモズライトがピッタリきますね。
ドラムはハイハットが上手く鳴ってました。
ここでもWくんは曲中にスティックを落としてしまい音が急に消えてしまった。
曲のエンディングを通り過ぎてしまい、どうやって終わらせるか?再度サビのDmの所を演奏した。
それでも終わりが迎えられずに、ベースがラストフレーズにトレモロでゴリゴリやって、やっとエンディングに持ち込んだ。
本当に本番は何が起こるか分かりません。
2曲目は 十番街の殺人、キーボードは入ってません。
イントロのドラムのプレイがカッコ良く決まりました。
ワンコーラス終わってテケテケのサーフィン・サウンドが入り2コーラス目こなすとA# Aで仕切り3コーラス目。
リズムギターのMくんが、かなり頑張っているのが聞こえる。
右手の細かい16分音符のストロークが滑らかで美しい。
いつの間にか最高難度とも言われ、名曲である十番街の殺人のリズムギターのカッティング。
彼は習得していたのだ。
キャラバンはまだ手が届かすにいましたが。
我々のバンドのレベルはそのくらいでした。
やはり彼は只者ではない、楽器は長くやっいるからって、上手くなるのではない。
センスと努力の賜物です。
途中、サビのフレーズはリードギターのミュートサウンドで演奏。
本来はキーボード奏者が担当すべきパートですが、練習時間が取れませんでした。
さあ、いよいよ転調されて Cのコードで
リードギターが低音域のモチーフのメロディーを変形させた、ノーキー・エドワーズならではの、フレーズがしびれます。
ここでも、ドラムのWくんはスティックを落下させてしまう。
つぎの転調で半音階上がりC#のメロディーに入ったあたりで、サイドギターかベースがコードかフレットを間違えて、バンドのサウンドに歪みというか、
不協和音が発生した。
でもなんとか曲のラストまで持ちこたえ
たが、最後のところでドラムがベードラ連打で足がつり、どたったリズムになってしまった。
聞いてるお客さんには、大したミスには聞こえないがバンドのメンバーにはハッキリ分かった。
でも十番街の殺人の演奏が終わると、お客さんからアンコールの声が掛かる。
あれ ? あれ ? こんな演奏でも結構お客さんに受けていることが、初めてわかりました。
さて、アンコールの場面はまた次回に。